2012年3月

タヤマ実践カレッジにおいて現地学生と議論

報告者:長谷川太希、谷雄太

3月27、28、29日の3日間、プノンペンにあるタヤマ実践カレッジにおいてビジネスおよび教育についてのディスカッションとプレゼンテーションを行った。初日参加者33名。参加者はビジネス2チーム、教育3チームに分かれグループワークを実施した。
時間詳細に関して、1日目13時~15時(テーマについてディスカッション)2日目13時~17時(ディスカッションの続きおよびプレゼン準備)3日目18時~21時(プレゼン)の工程を経た。
この企画の目的とはディスカッションとプレゼンを通じて、カンボジアの学生が自らの国の社会を見つめなおし、彼らが自分の国の人々のことを考え、行動できるようになることである。そしてその経験を活かし、カンボジアの次世代を担うリーダーへと成長していくことである。

事前配布資料について。
タヤマ学生はディスカッション未経験者が多かったことからディスカッションに関して大まかな説明を事前配布し、学生に目を通してもらった。(以下配布資料を掲載する。)

ディスカッションにおいて大事なこと

  1. 議論(ぎろん)のthemeをはっきりさせましょう。
    なにを話しているのかはっきりさせないと話がばらばらになってしまいます。themeを考え、themeにそって話をしていきましょう!
  2. 参加者(さんかしゃ)に同(おな)じように意見(いけん)をいうchanceをあたえましょう。
    だれかがひとりだけしゃべってしまうと、意見(いけん)があるのに言えないひとがでてしまいます。みなさんが平等(びょうどう)に意見がいえるように心がけましょう!
  3. 他人(たにん)の意見(いけん)をむやみに批判(ひはん)しないようにしましょう。
    他人のアイディアを否定(ひてい)してしまうと、アイディアを言えなくなってよいアイディアが生まれなくなってしまいます。どんどんアイディアを出すために、否定はしないようにしましょう!
  4. 思いついたアイディアはどんどん言いましょう。
    こんなこと言ったら笑われるんじゃないか。と思わずにどんどん言葉にしちゃいましょう。ジョークだって言ったっていいです。あたたかい空気をつくることが大切です。
    5. 他人の意見を聞いて、それに自分のアイディアを付け加えアイディアをどんどんふくらませていきましょう。
    こうすることでより完璧(かんぺき)なアイディアがうまれていきます。

またディスカッションおよびプレゼンを行うにあたり、机上の空論とならぬようカンボジアの現状を俯瞰できる資料を作成・配布し、前提知識として利用できるようにした。以下教育の事前配布資料を掲載し、教育のディスカッションおよびプレゼンについて述べる。
まずはカンボジアの教育の現状を客観的に見てみよう。
初等教育の達成度合いを識字率を用いて調べた結果、(上図のような結果を得た。)
ここからわかること

  1. 約10年前に比べて急激に識字率すなわち初等教育の普及率が上昇している。特に女子の増加率が著しい。
  2. 都市部と農村部では10パーセントほど教育の程度に格差が生じている。
  3. 男子と女子の間でもいまだ教育格差が生じている。
  4. 年齢別人口識字率分析より、若者ほど識字率は高く15歳から24歳においては90パーセント程度ある。

次にどの程度の教育まで受けられているかという点にかんしての考察に入る。
7~14歳は修学中の人数を中退として扱っているようなので正確な指標としては扱わない。それを踏まえた上で、上図の結果よりわかること。

  1. 小学校で中退する割合が約3割。小学校修了までが約5割ちょっと。義務教育として定められている中等教育を受けられるのが約半分というのが現状。
  2. 女子のほうが小学校で中退してしまう割合が大きい。
  3. 日本では9割以上だが、カンボジアでは高等教育修了割合が約1パーセント。
  4. 1~2パーセントの子は未就学であることにも着目すべき。

次に皆さんタヤマ学校の生徒のようにクメール言語以外の識字ができる割合について考察する。

  1. 英語の識字が可能なのは約5パーセント。みなさんのようにクメール、英語以外は2パーセント。皆さんは限られたエリート。
  2. 都市部と農村部では明らかな格差。農村部では違う言語必要ない?
    しかしグローバル世界の中、これから外国の企業がたくさん参入してくる可能性も。

つづいて国の政策と現状。
カンボジアでは、小・中等教育を無償で受ける権利がカンボジア王国憲法で保障されている。 カンボジア王国憲法によると、義務教育は小学校で6年間、中学校で3年間の計9年間となっている。 以下はそのことを明記したカンボジア王国憲法からの一部抜粋。
<Article 68:The State shall provide free primary and secondary education to all citizens in public schools. Citizens shall receive education for at least 9 years. The State shall disseminate and develop the Pali schools and the Buddhist Institute.>

以下SVA常務理事八木沢の文である。皆さんはこれを読んで、自分の実体験と照らし合わせてどう思うか。
現在、カンボジアでは教育省が中心となって、 ユニセフ等の支援の下にChild Friendly Schools (CFS)構想を推進している。全ての子どもたちが学校に通えるようにとの願いからだ。現実は、農村の中でも幹線道路から離れた僻地 となると小学校が2教室、先生も2人という小学校が多い小学校といっても僻地の学校となると、 教室には机と椅子と黒板があるだけで、教科書も子どもたちに一冊ずつはない。子どもたちは、黒板に先生が書いた文字をノートに写して暗記するのが一般的だ。ノートがない場合には、石版を利用している。折角カンボジア語の文字の読書きを勉強しても、教科書も本も農村には存在していない。文字を読む楽しみを知らない。文字を通して、本を通 して新しい知識、世界を知る機会が閉ざされている。僻地の農村の多くでは、小学2年生の途中で、ドロップアウトしてしまう。最低限の文字の読み書きと算数が出来る程度。
カンボジアの小学校は、1年から6年までだ。カンボジア全体で、小学校6年生を卒業できるのは、全体の43パーセントにすぎない。地域によっては2割にも満たない。またカンボジア全体の小学校で、小学校に井戸とトイレがあるのは57パーセント。2007年1月のカンボジア教育省の最新の 統計では、全国で、15,000教室が不足している。教師の数と質の不足の問題も深刻だ。
カンボジアの農村の子どもたちにとって、食べるものよりも本が一番欲しいという答えは、新鮮な驚きであった。カンボジアや他のアジアの国の 農村における子どもの就学率の低さは、労働力と して必要なこと、親の理解の不足、また、貧困が原因であるとされてきた。カンボジアの多くの農村の学校には、運動場がなく、体育の授業がない。また、音楽、芸術の授業もほとんどない。運動場となる土地があっても無計画に木を植えたり、花壇を作ったり、国旗掲揚塔を校庭のど真ん中に作ってしまう。学校の中に何をつくるという基準 もマスタープランも存在していない。日本でいう 「知育」「体育」「徳育」といった考えがない。
子どもたちが学校に来ない原因は、貧困と、子どもは労働力という考えがあることは否定できないが学校が楽しい場所ではないことは明らかである。学ぶ喜び、夢や希望、新しい世界を知る喜び感動がないことが子どもにとって一番学校に行きたくない原因になっていると思われる。

これをもとにして教育チームは「カンボジアの子供全員が義務教育を完了するためにできること」というテーマにそって、

  1. マクロ的視点からカンボジアの教育現状を改善すべく必要なことは何か。
  2. そのなかで自分たちにできることはなにか。
  3. 日本の学生と協力して教育改善のためになる企画(主題)を議論し、プレゼンを行った。

しかし1を考察するにあたっては政府の政策批判につながりやすく、政府批判を抑圧されているカンボジア学生にとって酷であったかもしれない。しかし教育省、教育システムに問題があることは彼らも理解し、指摘していた。
3チームとも自分の幼少期の実体験に基づきながらカンボジア教育の問題点を箇条書きの形で示し、その後それぞれの問題に関する解決策を模索した。「田舎の子供は学校から家までの距離が遠く通いにくい」「田舎の親は教育の重要性を理解していない」「子供は空腹で授業に集中できない」の他に「楽しい授業がないから学校が楽しくない」「教師の職は安月給であり、みな兼職している。そのため教える気がまったくない」「教師の質が悪く、知識がない」など、外部からでは把握しにくいような問題点が浮かび上がった。

彼らが提案した2と3の解決策に関して。一つのグループは子供の勉強意欲向上に自分たちが協力できると考えた。学校をきれいにする、勉強用具を配布するなどしてまず勉強する環境を整える。そして子供たちの夢を聞き、その夢をかなえるためには勉強をがんばることが必要だということを自分が日本語を勉強してきた経験を踏まえて教える、というアイディアだった。さらにただ教えるだけでなく、実際に自分が日本人と話せるのを見せることによって勉学の成果を子供たちに印象づける。自分たちの経験を後輩たちに伝え、勉強の重要性を説くというのは確かに自分の今持っているものを最大限に生かせるよいアイディアだと感じた。

別のグループは子供たちが学校は楽しいものだと思えるものにしようと考えた。子供たちが楽しんでもらえるような授業(音楽や体育)を企画し、実際に学校へ行ってともに楽しい授業を行うというのに加え、何もない学校に友達と一緒に遊べる簡易な遊具をつくるというアイディアだ。貧困ゆえに学校に行きたくても行けないこどもばかりだという固定観念に縛られていた私にとって学校を楽しくする企画というのは意表を突かれたアイディアであった。最後のグループは両親に教育の大切さを説くことが大切だと考えた。子供が将来安定した職に就くためには勉学が不可欠であり、学校とは無駄なところだという両親の考えを改めさせるというアイディアだ。また先のグループと同じく楽しい授業の企画も提案していた。

どれも浮上した問題点に即して現実に実行できそうな解決案ばかりだ。これからこうした企画を私たちも協力して詰めていき、実際に実現させたい。

続いてビジネスについて、事前準備、ディスカッション、プレゼンテーションについて述べる。
事前配布資料については省略するが、カンボジア経済全体の現状(インフラの未整備、証券取引所の設立等)、現在カンボジアで勢いのある、注目すべきビジネス(農業、養殖業、観光業他)、そしてビジネスモデルを考える上でのフレームワーク(今回はSWOT分析を紹介)の3点について事前資料配布及び当日の基調講演を行った。
その上で、「自分たちがカンボジアでできる新しいビジネス」というテーマでディスカッションを行った。議論がそれてしまわぬよう、先にこちらが考案したビジネスモデルのプレゼンテーションを行い、概ねその流れに沿った考察を行った。主にビジネスの内容、財務分析、今後の展望、という流れの説明となった。
ビジネスについてはもともと興味のある学生が多く、熱い議論が交わされた。2チームとも出版サービスに興味があり、それと通訳を組み合わせて、一方は現地出版企業と企業や個人との仲介業、もう一方は日本語学習者のために新しい漢字の本の出版、ということで事業の方向性がまとまった。両者とも自分たちの強み(日本語ができる等)を生かしたサービスを打ち出しており、また自分が普段の生活で感じているニーズ(漢字の本が非常にわかりづらいので、もっとわかりやすいものがあったらよい)から考察を重ねており、ビジネスの内容としては煮詰まってないものの、ビジネスを考える上での第一歩としては成功であったと言える。
また、他社との差別化やリスクヘッジについても考慮されていた。
実際にビジネスとして始めるにはまだまだ議論の余地があり、実現には程遠いが、それでも仲間たちとビジネスについて議論し、ともに考える機会をもつことで、将来ビジネスに携わることへの大きな布石を打つことができたと感じた。
また、今回考案したビジネスを今後より深く議論していけば、実現できるのではないかという印象を受けた。その際にはJCSIとして最大限協力したい。

ディスカッションおよびプレゼンに関して。
ディスカッションにおいて参加者がみな積極的に意見を出していた。そしてブレインストーミング的に問題点、解決策が次々と挙げられていた。初めての経験だったにも関わらず、積極性と発想力はとても素晴らしかった。改善点としては、ひとつのアイディアに対してもっと検討を全員で重ねていき、詰めたものを作り上げることだ。論理が一貫していない問題点や企画になおざりなところが見受けられた。しかし、これから回数を重ねれば議論の質も効率も上げられる余地は十分にあり、今後の議論が楽しみだ。
プレゼンに関しては大勢を前に緊張してしまい、日本語であることもあって事前の議論では詰めて考えられていたものがうまく伝わらないこともあった。プレゼンは経験回数で格段に良くなるものだと思うので練習していく必要がある。
プレゼン後には質疑が大変たくさんあり、聴者も真剣に参加してくれていた。

感想:3日間充実した議論を行うことができた。タヤマの学生はディスカッション・プレゼンの難しさとともに、その重要性を感じることができたら本望だ。私自信もディスカッションおよびプレゼン能力の未熟さを痛感し、精進しなければいけないと感じた。そして日本にいては気づくことができないような問題点やそれを解決するアイディアを彼らとの議論を通じて知ることができた。育ってきたバックグラウンドや価値観世界観の違う者同士が議論することによって感じたものは、たとえそれが小さな「気づき」でも俯瞰的視野を養うための塵となり、それを積み重ねることによって大きな糧となっているだろう。

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