2012年9月

カンボジア訪問
2012年9月1日-5日、MISメンバー10名がカンボジアを訪問した。①何かを得る、②タヤマ学生との友好を深める、③無事帰国する、④カンボジアを肌で感じる、⑤カンボジアに友人を作る、という5つの目標のもと、現地の日本語学校タヤマ実践カレッジの学生との交流や教育プロジェクトの実行、王立プノンペン大学学生との交流を行った。以下、その詳細を報告する。

Ⅰ タヤマ生との交流
今回のカンボジア訪問では、MISは基本的にタヤマ生と行動を共にした。単純な交流に始まり、前回カンボジアに訪問した際に立ちあがった教育プロジェクトの実行、MISによるタヤマ生への日本語の授業等を行った。以下では教育プロジェクト及びタヤマ生への授業について詳細を報告していく。

(1)教育プロジェクト
本プロジェクトは、今年の3月に谷雄太、長谷川太希、タヤマ実践カレッジの学生とで行ったカンボジアの教育に関するディスカッション(詳細は2012年3月の活動記録を参照)においてタヤマ生が提案した、「学校を楽しい場所にする」というカンボジアの教育改善案を「楽しい授業を行うことで、子供達の笑顔を創造し学習意欲を向上させる」という形で実行に移したものである。また、プロジェクト自体はタヤマ生自身の問題意識から始まったものであり、MISはそれを支援するという形でプロジェクトに参加した。
対象としたのはコンポンチュナン県プラーサット村の小学校で、MISメンバー10名とタヤマ実践カレッジの教師・学生32名が550人(当初は480人の予定だったか後に増えた)の生徒に対して行った。9月2日に行われ、算数と社会の授業を1時間ずつで合計約2時間の授業を行った。

~8月31日 日本での授業準備
「楽しい授業を行うことで、子供達の笑顔を創造し学習意欲を向上させる」という目的にかなうような授業計画を日本でMISが立案し、授業実施のための準備をした。タヤマが事前に小学校を訪問した際の情報をもとに計画を立てた。
授業を行う科目は算数と社会とした。小学校がプノンペンから片道4時間ほどかかる場所にあるため授業時間が2時間程度しかとれないこともあって、授業を多くとも2教科にしぼる必要があった。国語、すなわちクメール語(カンボジアの言語)を日本人が教えることは難しい。理科は授業を行えるほどの基礎知識が期待できず実験を行うための道具も不足している。英語に関しては現地の小学生にまったく知識がないためアルファベットの授業ぐらいしかできない。等の理由から国語、理科、英語の授業は行わないこととした。一方算数は簡単な計算なら可能であり、社会は知識がない状態でも教えやすいということからこの2教科を実際に取り扱うこととした。
算数は現地の小学生の学力を考慮し、単純な計算や、視覚的に理解できるような題材を扱うこととした。具体案としては「立体図形と展開図」、「計算すごろく」というものが出た。「立体図形と展開図」は展開図から出来上がる図形や、図形を開いてできる展開図を予想したり実際にそれらを紙で作って確かめてみたりすることで、算数・数学に不可欠な空間認知能力等を高めようというものである。しかし生徒に展開図作成や組み立てを行ってもらうとすると大量のはさみやテープが必要となり、また、全生徒が同時に机の上で作業を行えるほどの机、教室が揃っていないということを理由にこの案は廃案となった。
「計算すごろく」は一般的なすごろくのルールに計算を組み込んだものである。通常のすごろくと同様にさいころ、駒、盤を使用し、盤上のますには数字のみを書き込んだ。ルールはさいころを振って出た目の数だけ進むという単純なものではなく、さいころの目とますに書かれた数字とを使ってある決められた計算を行い、正しい答えを出せた場合のみ進めることとした。例えばサイコロの目とマスの数を足した答えが言えたら答えの数のマスに進むというルールや、サイコロを2回振って出た目の合計を答えることができたらその答えの分だけ進むというルールを実際に利用した。楽しみながら計算練習ができることに加え、どのような計算をするかによって難易度を変えられる点や、サイコロ・駒・盤(紙で作った)さえあれば屋外でもできる点から、生徒の学力がはっきり分からず小学校の設備も不足している今回のプロジェクトに適しているということでこの案を採用した。
社会の授業では、カンボジアの小学生に世界を見る目を持って欲しいという思いから、貿易ゲームや世界に関するクイズを行う案が出た。しかし貿易ゲームは小学生には難しすぎることや、ほとんど知識のない状態からいきなり世界全体のことを教えてもあまり理解が得られないと考えられることからともに廃案となった。なお、貿易ゲームはかわりにタヤマ生とともに行うことになった(詳しくは後述)。
最終的に、世界への入り口としてまずは自国であるカンボジアと日本について知ってもらうこととした。具体的には日本やカンボジアの地理(国旗、人口、面積等)についての説明をクイズを交えながら行い、その後子供たちが楽しめる日本文化として折り紙を紹介し実際に紙飛行機を作って飛ばすこととした。
それぞれの授業は1時間で行うこととし、ともに480人の生徒を10グループに分けて各グループをMISメンバー1人とタヤマ生・教師3人で受け持つこととした。
カンボジアへ発つ前に日本ですごろくの盤作り、駒・さいころの準備、授業の具体的な進め方マニュアルの作成を行った。

9 月1日 タヤマ生との授業準備
タヤマ実践カレッジにおいて今回のプロジェクトの目標の再確認、上述の授業計画の説明、当日の段取りの確認、当日へ向けての準備を行った。
準備ではすごろくの盤の印刷等に加え、折り紙に関してはタヤマ生にも紙飛行機の折り方を覚えてもらい、同時に子供たちに折り紙を紹介する際に見せたりプレゼントしたりする鶴や兜、手裏剣等も一緒に折ってもらった。

9月2日 授業実施
午前4時半にプノンペンを貸し切りバスで出発した。船に乗り換えてトンレサップ川を渡り、再び車に乗って小学校に到着した。この移動中に小学校の生徒の人数が当初予定の480人から550人に増えたことを知らされ、各グループの人数や授業の実施方法などを調整した。
小学校では子供達の日本語での「ありがとうございます」コールに迎えられ、小学校校長やタヤマ代表、MIS代表らの挨拶を終えて授業に入った。
まずは算数の授業を行った。グループごとに簡単な計算問題を出して生徒の算数のレベルを把握し、難易度を調整してすごろくを行った。すごろくのルールの説明等難航した部分や時間が足りない面もあったが、一通り授業を終えることができた。
村の方々に用意して頂いた昼食を食べた後、社会の授業を始める前に小学校の生徒達と一緒に簡単な歌と踊りをすることにした。実際に算数の授業を行ってみて子供達が緊張しているように見受けられたため、その緊張をほぐそうということで行った。「幸せなら手を叩こう」を身振りを交えながら日本語とクメール語(カンボジアの言語)で交互に歌った。
子供達の緊張がほぐれたように思われたところで社会の授業を開始した。当初は算数同様10のグループに分かれて行う予定だったが、一度ばらばらになってしまった子供達を再びグループに分け直すのは困難だと思われたので、生徒たちをその時いた場所で大雑把に5つほどのグループに分けて授業を行うこととした。また、当初はクイズに加えて日本やカンボジアに関する説明も行う予定だったが、子供達があまり興味を持てなそうということでひとまずクイズのみを行い、その後折り紙に移ることとした。
クイズは子供たちがクイズというもの自体に慣れていないためか予想ほど盛り上がらなかったが、日本やカンボジアについての基礎的な知識を伝えることはできたように思われる。紙飛行機は好評で、うまく折れないときや折り方が分からない時には日本人にも積極的に聞きに来てくれるなど、楽しみながら積極的に取り組んでくれた。
授業後には子供達に文房具を寄付し、記念写真撮影や感謝状授与の後小学校を後にした。

総括
今回の教育プロジェクトは、「楽しい授業を行うことで、子供達の笑顔を創造し学習意欲を向上させる」という目的に照らせば、「子供たちの笑顔を創造する」点においてはある程度達成できたものと思われる。一方で「学習意欲を向上させる」という目的を達成できたかは怪しい。他にもカンボジア訪問前の準備がぎりぎりになってしまったことや、小学校及び生徒たちに関する事前のリサーチが不十分だったこと、一時的な効果があったとしても今後の中長期的な効果は期待しづらいなど多くの反省点、課題が見つかった。人数の変更や生徒の状態に臨機応変に対応してプロジェクトを貫徹することができた等良かった点に加え、これらの反省点を踏まえ、現在は今後のプロジェクトのあり方について議論を行っているところだ。

(2)孤児院訪問
プノンペン郊外に位置するCPO孤児院を訪問した。この孤児院は1組のカンボジア人夫婦とそれを支援する日本のNGOによって運営されている。元はプノンペン市街地のスラム街で身寄りのない子供達を夫婦が世話していたのだが、スラム街自体が国によって郊外に強制移転させられたのに伴い移動してきた。移転当初は利用できる土地も建物も満足にない状態だったが、人々の努力によって現在は雨風をしのげるだけの設備は得られた。
ここにはタヤマ生が既に数回訪れており、今回はMISメンバーもともに孤児院を訪問した。今回の訪問では文房具の寄付と、子供達との交流とを行った。子供達による歌やダンスの披露の後に、一緒に踊ったりバレーボールや折り紙で遊んだりした。
子供達は非常に人懐っこく、活発だった。

2.タヤマ生への授業
タヤマ実践カレッジの授業時間を借りてMISメンバーがタヤマ生に向けて授業を行った。日本語の授業と貿易ゲームを行った。

(1)日本語の授業
授業内容は完全にMISに任された。日本語に関するものということで日本語による自己紹介と伝言ゲーム、お題にそった日本語を思いつくだけ上げてその数を競うゲームを行うことにした。タヤマでは学生がレベル別に3つのクラスに分かれているため、それに対応してMISメンバーも3チームに分かれてそれぞれ授業を実施した。
各クラスで授業はうまく進み、タヤマ生、MISメンバー共に楽しんで行うことができた。日本語を使ったゲームではタヤマ生の日本語能力の高さ、そしてそれを支える意欲の高さを再認識することとなった。

(2)貿易ゲーム
日本語の授業終了後にはタヤマ生に貿易ゲームを紹介し、実際にゲームを行った。貿易ゲームとはゲームを通じて世界の貿易の仕組みを体感し、同時に交渉力や計画力、作業力を養うものである。ゲームは複数のチームに分かれて行われ、各チームには始めに紙と文房具とが配られる。ゲームが始まると各チームは文房具を使って紙を定められた形(三角形、四角形、円など)、大きさに切り取り、それを引換所に持っていくとその形に応じた金額を受け取れるというのが基本的なルールだ。ゲーム中には交渉によって紙・文房具・お金・労働力等あらゆるものを交渉によって交換することが認められている。このゲームの肝は各チームに最初に配られる紙や文房具の種類、量が異なり、したがって初めからチーム間に不平等が生じているということだ。この不平等は当然ゲームの結果にも直結する。実はこのゲームにおけるチームは現実世界での国を表し、紙と文房具はそれぞれ同様に資源と技術力を意味している。プレーヤーはゲームを通じて各国の資源、技術力の不平等が貿易を通じて経済力の不平等につながることを体感できるようになっている。今回は一通りゲームを行ってもらった後に紙と文房具の意味を解説した。実際のゲームでは一部のMISメンバーがゲーム全体の運営を行い、残りのメンバーがタヤマ生とともにゲームに参加した。
開始直後は初めてやるゲームに慣れず、あまり活発な展開は生まれなかったが、ルールを飲み込み要領を得てくると非常に盛り上がったゲームとなった。交渉の声が飛び交い、紙とお金の引換所には行列ができるようになった。
ゲームは予想通り紙と文房具を多く持つチーム、すなわち実世界で言うところの資源と技術を兼ね備えたアメリカのような大国が勝利し、後は文房具(技術力)や紙(資源)に富んだチームが続き、どちらにも恵まれない発展途上国を表すチームが最下位となった。ゲーム後には前述のような紙=資源、文房具=技術という構図を解説し、自由貿易のもたらす結果や発展途上国が大国と渡り合うためにはどうすればいいのかということを話した。
今回のゲームはタヤマ生に楽しんでもらえたことはもちろん、今まであまり目を向けてこなかった世界貿易の現状を伝えることができた点でも非常に有意義なものになったと言える。タヤマは今後もこの貿易ゲームを授業の中で取り扱ってくれることになった。

Ⅱ プノンペン大学学生との交流
タヤマ生との交流に加え、9月1日プノンペン大学において、プノンペン大学で日本語を学ぶ学生と交流した。今回は特にテーマを設けてディスカッションを行うというようなことはせず、親睦を深める意味で単なる雑談を行うこととした。学生らはタヤマ生同様非常に日本語がうまく、コミュニケーションに支障が出ることはほとんどなかった。日本とカンボジアの学生で日ごろあまり経験できない交流ができた点で非常に有意義なものになった。
次回以降はタヤマで行ってきたようなディスカッションを行うなど、より発展した活動につなげていきたいと考えている。

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